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4D Cell-ECM interactions in multicellular systems

 私たちの研究室では、細胞外マトリックス(ECM)を細胞外の動的な情報マトリックスとして捉え、それが組織の形態形成および再生をいかに制御するのかを、哺乳類の皮膚をモデルに研究しています。具体的には、ECM分子の空間マッピング、定量的な4D(3D +時間)イメージング、時間分解能をもつ単一細胞トランスクリプトーム解析、そして多様な摂動実験などを組み合わせ、ECMの分子組成・空間構造・力学特性が組織をどのように形作るのかを探求しています。私たちの長期的な目標は、細胞とECMとの相互作用を設計・操作することで、形態形成やパターニングを細胞外から制御することです。

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1. ECM spatiotemporal code
Spatiotemporal information encoded in the ECM

 私たちは、ECMの時空間的な組織化によって、幹細胞およびその周囲のニッチ細胞の微小環境がどのように形作られているのかを研究しています。これまでに、ECMのタンパク質の大規模空間マッピングと機能解析により、特定のECM分子が「時空間コード」として上皮幹細胞/前駆細胞とニッチ細胞との相互作用を選択的に仲介すること、そしてこれらの相互作用が組織の発生・再生を制御することを明らかにしてきました (Fujiwara et al., Cell 2011; Cheng et al., eLife 2018; Tsutsui et al., Nat Commun 2021; Liu et al., J Invest Dermatol 2025)。この細胞外アトラスは、研究室内の多くのプロジェクトを支える礎であると同時に、新たな研究テーマを生み出し続ける源泉となっています。現在は、ECMタンパク質の空間マッピングと空間トランスクリプトミクスを統合し、ECMコードと細胞状態との未知の関係を明らかにする研究へと発展させています。

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2. ECM dynamics
Multi-scale ECM dynamics in 4D

 ECMは単なるタンパク質が沈着した静的な足場ではなく、形態形成や組織再生を支える動的なポリマーネットワークであることが明らかになってきました。しかし、分子レベルのECM動態がどのように時空間的に制御され、それが組織スケールの成長や力学とどのように関連しているのかは十分に解明されていません。この問題に取り組むため、私たちは、生体組織における基底膜の動態を、長時間かつ定量的に4次元で可視化できる蛍光基底膜レポーターマウスを開発しました (Wuergezhen et al., J Cell Biol 2025)。このツールにより、コラーゲンIVの空間的にパターン化された分子ターンオーバーが、基底膜のマクロな拡張や上皮組織の異方的成長と密接に連動していることが分かりました。さらに、得られた定量データを活用した数理解析・モデリングにより、基底膜の分子ターンオーバー、基底膜の拡張、そして力学特性の関係を記述・予測する枠組みの構築を進めています。現在は、基底膜を自己組織化するアクティブ・ポリマーネットワークとして捉え、(i) その動態が組織の力学を動的に調整する仕組みや、(ii) 基底膜と上皮細胞との相互作用を通じて、細胞だけではなし得ない新たな組織形態が生まれる原理の理解へと研究を発展させています。

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3. Development & regeneration
Emergence of tissue architecture through cell–ECM interactions

 生物と環境とのインターフェースである皮膚は、さまざまな生態環境への適応を背景に、進化的に構造と機能を多様化させてきました。とりわけ、毛包や羽毛などの皮膚付属器は、皮膚のフェノタイプを特徴づける主要因です。これらすべての付属器は、プラコードと呼ばれる2次元円盤状の上皮シートから発生し、器官特有の多様な3次元構造を形成すると同時に、周期的な再生や状況に応じた適応を可能にするために組織幹細胞を生み出します。しかし、こうした形態の多様性と再生能を可能にする普遍的な発生原理は、未だ十分に解明されていません。

 そこで私たちは、マウス毛包の発生動態を連続的に捉えるために、1細胞解像度の4Dイメージングと時系列トランスクリプトーム解析を組み合わせたマルチスケールの時空間解析を行いました (Morita et al., Nature 2021)。その結果、毛包上皮は、毛包原基に現れる2次元の同心円状プレパターンから3次元の円筒状機能ドメインへと移行する過程をとおして構築されること、さらにこのプレパターンの最外リング領域が毛包上皮幹細胞の発生起源であることが明らかになりました。私たちは、この同心円から円筒構造が形成される協調的な発生過程を「テレスコープ型」形態形成プロセスと呼んでいます。この過程では、細胞集団やそれを取り巻く細胞外環境の区画化とその時空間的な発展が、段階的な形態形成を支える原理であると考えています。今後は、この概念モデルを他の皮膚付属器へと拡張し、臓器横断的・種横断的解析をとおして、発生・再生・進化に共通する普遍原理と、その分岐による多様性創発機構の解明を目指します。

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4. Technology & tool development
Quantitative 4D mapping, imaging and manipulation across scales

 上記の研究は、私たちが開発してきた、細胞およびECMを単一細胞解像度で4次元的に可視化・定量化する技術基盤によって支えられています。これまでに開発してきた主な技術やツールは下記のとおりです。今後は、新規の人工タンパク質や高度な遺伝子操作手法の開発をとおして、細胞とECMとの相互作用の設計・操作にも挑戦していきます。

  • 基底膜の分子・構造特性を空間マッピングできる、ECMアトラス構築手法 (Tsutsui et al., Nat Commun 2021)

  • 発生組織における細胞系譜動態を構築できる、1細胞解像度の長期4Dイメージングと時系列トランスクリプトミクスの統合的解析手法 (Morita et al., Nature 2021)

  • 生体組織内の基底膜動態を定量的に4D可視化できる、内在性蛍光コラーゲンIVノックインマウス (Wuergezhen et al., J Cell Biol 2025)

  • 周期的な組織再生現象の時間軸を再構成できる、単一細胞トランスクリプトーム解析手法(応用例:疑似毛周期の構築)(Yokota et al., Cell Rep 2025)。

Our goal

 私たちの研究の長期的なゴールは、細胞外微小環境がどのような原理で機能しているのかを解明し、その理解に基づいて微小環境を設計・操作することで、細胞の外側から生命現象を自在に制御するアプローチを提示することです。

©2021 by FujiwaraLab

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